2021/11/10

肥満物質の正体

今回はダイエットの医学的な話に触れます。

今までの医学では、カロリー理論といって、カロリーのイン・アウトバランスで太ったり痩せたりする、と言われていました。しかし、実際はそんなに単純ではなく、食事で摂取カロリーを制限すれば、消費されるカロリーも減ってしまい、運動して消費カロリーを増やそうとしても、運動時以外の活動量が減って一日の消費カロリーはあまり変わらなかったりと、生理学的に体重を維持しようとする機構が働くことがわかってきました。

インスリンは、食事から吸収された糖を細胞内に貯蔵するホルモンです。現代人の食事は血糖値が急上昇する食品に溢れ、さらに、食事あるいは間食のタイミングも早朝から深夜にわたり、インスリンが過剰分泌されやすくなっています。本来は食後にスパイク状に分泌されるインスリンが、常に血中にあり、さらに糖も供給過多のため、糖を細胞内に貯蔵すると言うインスリンの本来の作用がだんだん弱まってしまいます。この作用を補填するために、さらにインスリンが分泌されます。これがいわゆるインスリン抵抗性の状態で、これこそが、体重をじわじわと増やしている犯人だと言われています。


痩せるには、いかに体を脂肪燃焼モードにしてあげるか、つまり、肥満物質の正体がインスリンだとわかったので、インスリンの分泌を抑えることがポイントになります。逆に、カロリーを計算することは、今日からやめちゃって大丈夫です。


血中にあふれた糖は細胞によって消費され、ある程度血糖値が下がれば、肝臓に貯蔵された糖が血中に放出されて、エネルギー源となります。それも減ってきて、初めて脂肪が燃焼するわけです。食後数時間経つと強烈な空腹感に襲われるのは、血糖値が相対的に下がり、手っ取り早く血糖値を上げるために脳が「何か食べて〜」と体に信号を送っている状態です。血糖値を手っ取り早く上げる食品を避ける、これを数週間続けることで脂肪が燃焼しやすい代謝に変わります。そうすると、強烈な空腹感もなくなります。間食や夜食、あるいは甘い飲み物を飲む習慣がある人は、これをやめるだけでもかなり効果的です。


もともと間食はあまりしない、糖質も抑えている、と言う人にお勧めなのがファスティングです。例えば、朝食あるいは夕食を抜くことで、16時間程度のファスティングとなり、その間は脂肪が燃えやすくなります。ただし脱水になりやすいので、水分はいつもより多めにとってください。やり始めて数日は耐えられない空腹感に襲われると言う人もいますが、そう言う場合は脂肪分を摂ってみてください。インスリン分泌を促進する食品として糖質が代表的ですが、タンパク質もインスリンは分泌されます。つまり食べすぎれば太る。脂肪分は、インスリンが分泌されにくいけれども満足感を与えてくれるので、ダイエットの救世主となり得ます。例えば朝起きた時はお腹が空いていないけど、朝食を抜くと、午前中にお腹が減って仕事にならない、という人は、コーヒーに高脂肪の生クリーム(無糖)を入れて飲んでみてください。空腹感が落ち着くと思います。コーヒーフレッシュはトランス脂肪酸が入っていますので、動脈硬化の観点からあまりお勧めはしません。


今回の内容の出典は、ジェイソン・ファン先生の「トロント最高の医師が教える世界最新の太らないカラダ」という著書です。文献を見ないと信じられない!という方は、ぜひご参照ください。


最後に、ファスティングは昔から人類がやっていることだし、最近医学会でも見直されつつある方法ではありますが、生活習慣病などで病院にかかっている人は、自己判断でやるのではなく、必ず主治医の指示を優先して下さいね。

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