2022/12/03

Positive Intelligence

ご無沙汰していました!母親業に時間を取られなかなか更新できずにいました・・・

さて、今日は人間関係や仕事、恋愛、子育てなど様々な場面で役立つPositive Intelligenceという概念を紹介します。

Positive Intelligence(PQと略す)はシャザード・チャミン氏のベストセラーのタイトル(邦題「スタンフォード大学の超人気講座 実力を100%発揮する方法」)でもあり、知能指数IQや心の知能指数EQとはまた別の「真の実力を発揮するために必要な能力」とでも言いましょうか。アンガーマネジメントや、日常のイライラ、傷ついたり落ち込んだり、といった負の感情を処理できるとても簡便な方法でもあります。

私がthe Life Coach Schoolで学んだコーチングの手法は、自分の脳の潜在的な考えを客観的に見(メタ認知し)たり、隠れいてる感情や気持ちの部分を深く掘り下げていくには非常に優れています。でも、その先の、実際に行動の変化として応用していく部分に関しては、コーチがちょっとだけ提案することはあっても、あえて具体的な指示を控えます。理由は「一番いい方法」というのが人によって全く違い、コーチが自分の経験に基づいて指示をしてしまうと、クライアント自身の細かい状況に合ったもっと良い方法が埋もれてしまう危険性があるからです。ただ私の実感として、日本で生まれ育った人(特に男性)は、欧米育ちの人をコーチングしている時と比較して感情や気持ちを意識するということのハードルが高く、目を向けること自体に抵抗すらあるような印象があります。

一方でPQは非常に実践的な概念です。鍛えて育てることもできて、トレーニングの所要時間も10秒単位なので忙しい日常の中でも実践できて、即効性も実感できます。したがってコーチングに馴染みがない人にも自信を持ってお勧めできます。

Positive Intelligenceの考えでは、いつでも実力を発揮できている人というのは稀で、ほとんどの人は実力を発揮することを自分自身の脳が無意識に妨害してしまっているそうです。脳が自分自身を危険から守ろうとする原始的な反応で、子供の頃には我々を危険から守ってくれていたものです。でも大人になってからは重要性が減って、場合によっては害になってしまっているということです。どのように妨害しているかは、その人の生い立ちや性格によって違いますが、大きく分けて10種類の方法に分類されます。

主たる妨害者(Saboteurサボター)はJudge(審判/批判者)で、誰にでも多少なりとも潜んでいると言います。「こんなのじゃダメだ」「なんであの人はこんなに〇〇なんだ」「私はいつも失敗してばかり」のような批判的な心の声はこのJudgeによって発せられています。自分に厳しい人、あるいは他人にも厳しい人というのは、このJudgeの声が強い人かもしれません。子供はこのJudgeによって世の中の正悪や、注意しなければならない危険などを見分けることを覚え、世の中に潜む様々な危険から我々を守ってくれる役割があったのでしょう。しかし、大人になってもこの声が強いと、例えば仕事上の失敗を気に病み、その後のパフォーマンスの妨げになってしまうかもしれません。あるいは失敗を恐れて新しいことに挑戦しにくくなるかもしれません。またJudgeが他人に向けられると、相手はそれを感じとるので、いつの間にか敬遠されてしまう原因にもなり得ます。

Judge以外の妨害者はaccomplice(共犯)と呼びますが、avoider(優柔不断)、controller(仕切り屋)、hyper-achiever(優等生)、hyper-rational(理屈屋)、stickler(潔癖症)、pleaser(八方美人)、hyper-vigilant(怖がり)、restless(移り気)、victim(被害者)に分けられます。ウェブで質問票に答えると自分のサボターのランク付けがわかります。日本語が若干怪しいですが、5分ほどでできるので、興味があればぜひやってみてください。

妨害者の一方で、脳にはSage(賢者)と呼ばれる能力もあります。賢者は脳の中の理知的な声で、explore探究心、empathize共感する力、innovate革新、navigate航海、activate行動からなります。妨害者の声を減らし、賢者の声を発掘することで、眠っている実力を発揮しやすくなるということです。

もちろん実力を発揮することも大事なのですが、私自身はPQが人間関係に応用できることの方がすぐに実感できました。妨害者が活発な状態で人と接すると、その人の中の妨害者を刺激してしまいます。付き合いはじめはラブラブだったカップルが、数年経ったら喧嘩ばかりしている、という例をとってみましょう。はじめは共感や探究といった「賢者」優位だった二人の関係性が、徐々にお互いの妨害者が顔を見せるようになったという捉え方ができます。相手が根本的に変わったというよりも、何かがお互いのサボターを刺激してしまっている悪循環の状態なわけです。そう思うとまだこのカップルの関係は修復可能な気もします。

私の場合は今まで「苦手」と思っていたような人も、実はその人自身が悪い人というわけではなく、その人のサボターが強力なんだという理解に変わりました。不幸な出来事が続いて医療不信になってしまっていたりで、攻撃的な患者さんやその家族と面談をする機会は、医療者なら度々あると思います。以前はただただ「避けたい」と思っていましたが、今では少し違います。相手がなぜ攻撃的になっているのか、共感を持って想像すると、大体は自身の身体や仕事、家族の将来についての不安が火種になっています。自分にも不安があります。怒鳴られたら嫌だな、変なこと言って火に油を注いで、それでこのあと長引いたらどうしよう、訴えられたらどうしよう、他のスタッフに迷惑がかかったら、などなどといった不安は、自分の中の妨害者を刺激し、それが引き金で相手の妨害者も刺激してしまいます。こういった自分の中の不安を生んでいる考えから一旦距離を置いて、自分の置かれた状況でできる最良の対応を落ち着いて考えることができる(探究心)と、自然と相手の攻撃性が徐々に薄れ、お互いのストレスが減り、ひとまず平和に解決する、という経験を何度かしました。

妨害者や賢者に関する各論は本を読んでいただいた方が面白いと思うので今回は割愛します。本を読む時間はないな〜という方のために、チャミン氏がTEDで講演した動画(20分)もあったので、紹介しておきます。

PQを使ったコーチングの無料体験も受け付けていますので、興味がある方はぜひ予約してくださいね。

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